脂質異常症

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症(高脂血症)と診断される人は、日本ではおよそ220万5,000人で、男性よりも女性の方が多いと報告されています。(厚生労働省患者調査:2017年参照)
血液中のLDLコレステロール (悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)、中性脂肪(トリグリセリド)の数値に異常がある場合、脂肪異常症と診断されます。脂質異常症は、放置しておくと次第に動脈硬化を進行させ、さらに脳梗塞や心筋梗塞、狭心症などの発症リスクを高めます。注意が必要なのは、脂質異常症には自覚症状がありません。早期発見のためにも定期健康診断が非常に大切です。

脂質異常症の原因

脂質異常症の大きな原因は、食生活と考えられています。とくに、動物性脂質の多い食事は、血液中のLDLコレステロール値や中性脂肪を増加させます。カロリーが高いため肥満となります。脂質異常症の原因は、肥満のほか、運動不足や喫煙、アルコールの異常摂取、遺伝的要因だとされています。

脂質異常症の検査・診断

脂質異常症の診断及びその原因を特定するために、血液検査を行います。血液検査では、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、トリグリセリド値を調べます。

  • LDLコレステロール 140mg/dl以上:高LDLコレステロール血症
  • HDLコレステロール 40mg/dl未満:低HDLコレステロール血症
  • トリグリセリド(TG)150mg/dl以上:高トリグリセリド血症

脂質異常症と診断されたら、

を行います。

注意が必要な脂質異常症

原発性高脂血症

冠動脈疾患の発症頻度が高いため、その診断は非常に重要です。

続発性(二次性)高脂血症

甲状腺機能低下症などが原因で発症する高LDL血症を見逃さないように注意する。

脂質異常症の治療の流れ

リスク評価を行う

  1. 冠動脈疾患の既往歴や家族歴があるかどうか
  2. 高血圧症、糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、などがあるかどうか
  3. 年齢、性別、喫煙歴、血清コレステロール値などを評価

管理目標を決める

低リスクの方 LDLコレステロール<160mg/dl
HDLコレステロール≧40mg/dl
中リスクの方 LDLコレステロール<140mg/dl
HDLコレステロール≧40mg/dl
高リスクの方 LDLコレステロール<120mg/dl
HDLコレステロール≧40mg/dl
冠動脈疾患の既往のある方 LDLコレステロール<100mg/dl
HDLコレステロール≧40mg/dl
トリグリセリド(TG) 一律150mg/dl未満

脂質異常症の治療

脂質異常症の原因となる疾患がある場合は、その疾患の治療を行います。検査結果をもとに、患者さんの疾患リスクを評価し、治療方針を決めていきます。治療は、食生活などの生活習慣の改善を基本とし、禁煙または減煙と適正体重への減量及びその維持が必要です。

食事療法

1.高LDL血症

肉の脂身、内臓、乳製品、卵黄、菓子類、加工食品の摂取を制限し、代わりに植物繊維、植物コレステロールを含む未精製穀類、大豆製品、海藻類の摂取を増やす

2.高TG血症

  • 菓子類、ジュースなどの飲料、穀類などの糖質摂取制限
  • アルコールの摂取を控える
  • 禁煙する
  • 動脈硬化予防、免疫応答の改善、さらには制がん効果まで期待されるn-3(オメガ3)系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚(サンマ・イワシ)の摂取を増やす

3.低HDL血症

  • 菓子類、加工食品の摂取制限
  • 過剰摂取で善玉コレステロールであるHDLを低下させ、がんの発生に結びつく可能性があるn-6(オメガ6)系多価不飽和脂肪酸の摂取制限のため、植物油の過剰摂取を控える

運動療法

早歩き、スロージョギング、水泳、サイクリングなどを1日30分以上、出来れば1時間~2時間を目安に楽しく運動する

薬物療法

食事療法や運動療法で脂質異常が改善されない場合、また糖尿病や慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患がある場合、LDL値が180mg/dl以上を持続する場合、薬物療法を考慮します。薬物療法は、患者さん1人1人の状態によって、処方薬を検討していきます。薬物療法に使用される薬は、長期治療実績がある薬ですが、どの薬にも多少の副作用はあります。万が一、副作用が起きましたらすぐに当院に御相談下さい。

脂質異常症治療薬の特性と注意すべき副作用

分類 特性 副作用
LDL-C non HDL-C TG HDL-C
スタチン ↓↓↓ 横紋筋融解症、筋肉痛や脱力感などミオパチー様症状、肝障害、認知機能障害、空腹時血糖値およびHbA1c値の上昇、間質性肺炎など
陰イオン交換樹脂 ↓↓ 消化器症状、脂溶性ビタミンの吸収障害、ジギタリス、ワルファリンとの併用ではそれら薬剤の薬効を減ずることがあるので注意が必要である。
小腸コレステロール
トランスポーター阻害薬
↓↓ 消化器症状、肝障害、CK上昇
フィブラート ↓↓↓ ↑↑ 横紋筋融解症、肝障害など
ニコチン酸誘導体 ↓↓ 顔面潮紅や頭痛など
※日本人では多いといわれているが、慣れの現象があり、少量から開始し、増するか、アスピリンを併用することで解決できる。
プロブコール - ↓↓ 可逆性のQT延長や消化器症状など
多個不飽和脂肪酸 - - 消化器症状、出血傾向や発疹など

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